日本国内での電子帳簿保存法(以下、電帳法)対応では、「データの真正性」「可視性」「検索性」などが求められ、企業が扱う帳簿書類(請求書・領収書・契約書など)を電子保存する場合には、一定の要件を満たす必要があります。YetiForceCRMはオープンソースのCRMながら、ドキュメント管理機能やアクセス権限管理、監査ログなどの仕組みを活用することで、電帳法対応の一部要件を満たすための環境整備が可能です。
以下では、YetiForceCRMの機能を活かして電帳法に対応するためのポイントと具体的な設定例をまとめています。ただし最終的な適法性の確認や、WORM(Write Once Read Many)ストレージを含む外部システム連携の要否などは、自社の税務・法務担当や専門家と協議のうえで行ってください。
1. 電子帳簿保存法における主な要件
電帳法で電子保存する場合、大きく次の要件を満たすことが求められます。
- 真正性の確保(改ざん防止)
- タイムスタンプの付与や、アクセス権限・監査ログなどにより、データの改ざんリスクを低減する措置が必要。
- 可視性(見読性)の確保
- 保存した電子データを必要に応じてすぐに表示・印刷できること。
- 検索性の確保
- 日付・金額・取引先名などの主要項目で検索が可能であること。複数条件検索や任意項目での検索が求められる。
- 保存期間中のシステム的管理
- 保存期間中(通常7年)、速やかに提出・閲覧できる状態を維持すること。システム変更時の移行ルールなども含む。
2. YetiForceCRMでの対応方法
2-1. ドキュメント管理モジュールを活用した電子データの保存
YetiForceCRMには「ドキュメント(Documents)」モジュールや「メール添付ファイル管理」などの機能があり、PDF化した帳票や領収書などのファイルをアップロードして管理できます。
- フォルダ・カテゴリ分け
- 「請求書」「領収書」「契約書」「見積書」など、書類種別ごとにフォルダを作成し、体系的に保管。
- 必要に応じて「取引先別」「年度別」など二重階層で分類すると検索性が高まる。
- カスタムフィールドによる検索性向上
- 「発行日」「取引先名」「金額」「担当部署」など、電帳法で求められる検索条件に相当するフィールドを追加し、ドキュメント登録時に必ず入力する運用を徹底する。
- これにより、標準の検索機能や拡張検索機能を使って複数条件での絞り込みが可能になる。
- プレビューモードまたはPDFビューワの活用
- ドキュメントをクリックするとプレビュー画面で確認できるようにしておき、いつでも可視化できる(見読性)状態を整備する。
ポイント
現行の電帳法では、PDFへのタイムスタンプ付与(または電子署名)を行うことで真正性を担保する方法が推奨されています。YetiForceCRM自体には署名機能や認証局の機能は無いため、外部サービスで電子署名・タイムスタンプを付与したファイルをアップロードする運用を組み合わせるケースが多いです。
2-2. アクセス権限管理と監査ログ
電帳法で求められる「改ざん防止」措置の一部として、権限管理や監査ログ機能が役立ちます。
- ロールベースのアクセス制御
- 経理担当、営業担当、管理者など、役割(ロール)ごとに閲覧・編集・削除権限を細かく設定し、不必要なユーザーが帳票データを変更できないようにする。
- ドキュメントモジュールを「読み取り専用」に設定し、誤操作や改ざんリスクを下げる運用も検討。
- 監査ログ機能(変更履歴)
- YetiForceCRMにはレコードの変更履歴(Audit Trail)を残す機能がある。
- いつ・誰が・どのドキュメントをアップロード/変更/削除したかが記録されるようにし、改ざんの有無を後から検証できる体制を作る。
2-3. ワークフローで保存プロセスを標準化・自動化
YetiForceCRMのワークフロー機能を活用すると、電帳法対応のために必要な書類登録や承認などを漏れなく処理しやすくなります。
- 保存作業のタイミングを自動化
- 「請求書モジュールでステータスが ‘発行済み’ になったら、自動でPDF作成とドキュメントモジュールへのアップロードを促す通知を担当者に送信する」といった流れをワークフロー化する。
- 承認フロー・監督プロセス
- 一定金額以上の請求書は上長承認が必要…などのルールをワークフローで設定し、適切に承認が下りてから書類が正式に保管されるようにする。
- 外部サービスとの連携
- 電子署名やタイムスタンプを付与する外部ツールへの連携・自動アップロードフローを組む方法も考えられる。
2-4. 検索機能の充実と運用ルール
電帳法では「日付」「金額」「取引先名」など、複数条件を組み合わせての検索が可能であることが必須要件となっています。YetiForceCRMの検索機能を最大限活かすためには、運用ルールの整備が大切です。
- 必須入力フィールドの設定
- ドキュメント登録時に「発行日」「金額」「取引先名」などを入力しないと登録できないようにする。
- 高度検索(フィルタ)の活用
- 標準の検索機能やカスタムフィルタで、「発行日が〇年〇月~〇年〇月」「金額が××円以上」「取引先名が部分一致」などの複合条件検索を行えるようにする。
- ユニークIDの付与
- 書類ごとにユニークID(書類番号)を自動採番しておくと、監査時に特定しやすい。
3. 注意点と追加検討事項
- タイムスタンプの付与
- 先述のとおり、YetiForceCRM自体には公的なタイムスタンプ機能がないため、タイムスタンプサービスや電子署名サービスを活用し、真正性を高める運用が推奨される。
- WORM(Write Once Read Many)ストレージ
- 一部の企業では、文書保存を“変更不可”のWORMストレージに置くことを法務・税務上求められるケースもある。YetiForceCRMをフロントエンドにして、実体のPDFはWORM環境で保管する構成も検討。
- システム更新時のデータ移行
- 電帳法では、保存期間(7年や10年など)を満たすまでデータを閲覧可能状態に保つ必要がある。YetiForceCRMやサーバーを更新する際の移行計画もあらかじめ定めておくこと。
- 書類の現物(紙)との関係
- 紙で受領した領収書や請求書をスキャンして電子保存する場合は、スキャナ保存要件や解像度要件、適切な検索索引の付与など、別途の要件(スキャナ保存制度)がある。運用フローを整理しておく。
4. まとめ
YetiForceCRMは標準機能として、ドキュメント管理・監査ログ・ワークフロー・柔軟な権限設定を備えており、これらを適切に組み合わせることで電帳法対応の主要要件(真正性・見読性・検索性)の多くをカバーすることが可能です。具体的には、以下の手順で進めるとよいでしょう。
- 文書種別ごとの保管ルールとフォルダ構成を決める
- ドキュメントモジュールで必須フィールド(発行日、金額、取引先など)を設定し、運用ルール化
- 監査ログや権限管理を活用し、改ざん防止策を整備
- 必要に応じて外部のタイムスタンプサービスやWORMストレージと連携し、真正性をより強固に
- 定期的に運用状況を点検し、法改正やシステム更新に合わせて最適化
最終的には、税務署・専門家との協議を行い、個別企業の状況に応じた追加措置(電子署名の導入やシステム連携)を検討することが重要です。YetiForceCRMを活用して電子帳簿保存法へ対応することで、紙の削減や業務効率化を図りつつ、コンプライアンスを担保できる体制構築を目指しましょう。